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遺言書に納得がいかない…。無効にするために気を付けるべきポイントを解説!

遺言書は、亡くなった方(被相続人)の意思が書かれたものなので、基本的には遺言書に従って遺産を分けなくてはなりません。しかし、その遺言書は本当に有効なものなのでしょうか。

遺産は元々亡くなった方の所有物だったことから、その処分も亡くなった方の意志に従うのが理にかなっているとされています。

遺言書があれば、そこに書かれた故人の遺志を優先することが原則です。

しかし、その遺言書は本当に有効なものでしょうか。

相続人が「遺言書の内容に納得いかない」「遺言書を無効にしたい」という場合に、遺言書を無効にして(遺言書の内容を無視して)遺産を分配することはできないのでしょうか。

遺言書には法律上、決められた形式があり、その要件を満たしていないものは無効となります。また、遺言書の形式は有効であっても、その作成にあたって故人の本意ではない、または相続人全員で合意をすれば、遺言とは異なる内容の遺産分割を行うことができます。

今回は、有効な遺言書があっても遺言書の内容と異なる内容の遺産分割をしたい場合にはどうすればよいのか、司法書士が解説します。

有効/無効な遺言書を見分けるコツ

残された遺言が無効となる場合には、その遺言に拘束されずに遺産分割協議をすることができます。

それでは、遺言書が有効か無効かをどうやって見分ければいいのでしょうか。

まず、遺言は厳格な方式を充たした書面だけが有効な遺言として扱われます。単なる故人のメモのようなものには効力は認められません。

方式を欠く遺言は無効となるので、まずは方式に違反があるかどうかをチェックしましょう。

一般的に、遺言書は①自筆証書遺言、②公正証書遺言、③秘密証書遺言の3種類に分かれます。

① 自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、以下のような遺言書のことです。

  • 原則自筆で作成をする
  • 自宅で管理する
  • 開封の際は家庭裁判所にて検認が必要

なお法改正により、それぞれ以下の点が変更になりました。

  • 財産目録部分はパソコンでの作成や通帳のコピー利用などが可能(2019年1月より適用)
  • 手数料を支払い法務局で保管も可能(2020年7月より適用)
  • 法務局で保管した自筆証書遺言は検認不要(2020年7月より適用)

自筆で書けるため手軽に誰でも作れますが、要件を欠いてしまったり、遺言書自体が発見されずに終わってしまったりというリスクがあります。

また、自分の死後に第三者が読んで理解できる必要があるため、解読不能や財産が特定できない箇所などがあれば、遺言として有効に機能しません。

自筆証書遺言でチェックすべきポイントを以下にまとめましたので、是非参考にしてください。

今後の作成を考えている方や、遺言書による相続が予想される方には、予備知識として役立ちますし、すでに自筆証書遺言を作成している方は、できあがった遺言書が無効にならないかをチェックできます。

 

自筆証書遺言のチェックポイント

方式のチェックポイント

①遺言書の作成日が自筆で書いてあるか

②遺言者の署名・押印があるか

③財産目録以外、全て自筆で書いているか

④訂正がある場合、訂正場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名しており、かつ、その変更場所に押印があるか

 

内容のチェックポイント

⑤遺言作成時遺言能力(15歳以上で判断能力があること)があったか

⑥遺言の内容が理解可能であること

⑦第三者からの強要がなかったか

 

また、変更については、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければならないとされています。遺言書を発見した場合には、家庭裁判所で検認の手続きを経なければならず、封印してある場合には家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとに開封することになります。

②公正証書遺言

公正証書遺言とは、以下のような遺言書のことを指します。

  • 2人の証人立会いでの作成
  • 公証人役場で保管される
  • 公正証書作成の費用が発生する

法律の専門家である公証人が遺言を作成しますので、方式の不備で無効になることはなく、もっとも確実な遺言方法といえます。

また、公正証書で遺言を残しておくと、遺言者が亡くなった後の家庭裁判所での遺言の検認という手続きも不要になりますし、原本を公証役場に保管してもらえるので、遺言書が破棄されたり、改ざんされる恐れもないというメリットもあります。

公正証書遺言のチェックポイント

方式のチェックポイント

①証人欠格者が立ち会っていないか

②証人の人数が足りなくなかったか

③遺言者・証人の署名・捺印があるか

④公証人の付記、署名、捺印があるか

 

内容のチェックポイント

⑤遺言作成時遺言能力(15歳以上で判断能力があること)があったか

⑥遺言の内容が理解可能であること

⑦第三者からの強要がなかったか

 

③秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、以下のような遺言書のことを指します。

  • 2人の証人立ち合いでの作成
  • 証人と公証人に内容は公開せずに遺言の存在のみを証明してもらう
  • パソコン、代筆も可能(自筆による署名は必要)

秘密証書遺言は、遺言書が存在しているという事実だけを確実にするものです。公証人も内容を確認しません。遺言内容に不備があると無効になってしまうので、その点では公正証書遺言に劣ります。また、自筆証書と同様、遺言書は検認手続きが必要になります。

秘密証書遺言のチェックポイント

方式のチェックポイント

①作成日が書いてあるか

②署名と押印があるか

③遺言書に押印した印章と同じ印章で封印しているか

④封紙上に日付と公証人、遺言者、証人2人の署名押印があるか

⑤証人欠格者が立ち会っていないか

⑥証人の人数が足りなくなかったか

⑦訂正がある場合、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して署名し、かつ、その変更の場所に印を押しているか

内容のチェックポイント

⑧遺言作成時遺言能力(15歳以上で判断能力があること)があったか

⑨遺言の内容が理解可能であること

⑩公序良俗に反しないか

⑪第三者からの強要がなかったか

遺言書を無効にしたい時に気を付けること

遺言書にどうしても納得できない場合は訴訟などの手段もあります。遺言内容が極端に偏っている場合、遺言者の判断力に問題があったと推測される場合は、次の方法を検討してください。

遺言無効確認訴訟

遺言書が無効であることを訴える裁判であり、遺言能力や自筆か否かが争点になります。

原則的には訴訟の前に調停の申し立てを行いますが、調停による解決が困難な場合は訴訟の提起も可能です。訴訟する場合は遺言の無効を訴える側が原告となり、その他の相続人や受遺者、または遺言執行者が被告となります。

各種の証拠が必要になるため、医師の診断書や看護記録、筆跡鑑定など、あらゆる証拠書類を集めることになりますので、注意が必要です。

遺産分割協議または調停

遺言無効確認訴訟の結果、無効の判決が下った場合は、遺産分割協議によって財産の分け方を決めていきます。ただし、親族同士が法廷で争った後ですから、建設的な話し合いは難しいでしょう。状況にもよりますが、遺産分割協議が困難な場合は調停を申し立てるようにしてください。

遺産分割審判

調停の場合は、なるべく話し合いで解決するよう手続きを進めますが、遺産分割審判では遺産の分割方法を裁判所が決定します。一般的には調停のプロセスを経て審判へと移行しますが、遺言無効確認訴訟を提起した経緯があれば、審判からのスタートが認められる場合もあります。

まとめ

これから遺言書を作成する方であれば、まず専門家へ相談するようにしてください。

現在は遺言書に関する専門書もあり、遺言のひな形も紹介されていますが現実の遺言書がひな形どおりに作れるとは限りません。また、発見した遺言書の扱いにも専門知識が必要であり、有効・無効の判断がつかない場合は、遺言を実行することもできません。

遺言書は内容一つで相続人や受遺者の将来が決まってしまうため、慎重に慎重に作成するべきです。

故人の最後の意思が無効にならないよう、弁護士や司法書士のアドバイスを受けるようにしておきましょう。

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